大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(行ナ)37号 判決

一 前掲請求の原因事実中、本願発明につき、出願から審決の成立にいたる特許庁における手続、発明の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張の取消事由が存するか否かについて判断する。

本願発明が内容物に有益な効果(ただし、原告主張の具体的効果を除く。)を挙げさせるため磁界処理をして磁気エネルギーを与えることを特徴とする容器を提供することを目的とし、内部に磁石を包含所持させて有効に磁気の働く磁場を形成し、容器自体を磁界処理器とする構成であること、この場合、磁界処理とは被処理物を磁気作用の働く場所にあるようにして、その磁気作用により被処理物に有益な効果を挙げさせる意味であることは当事者間に争いがない。

ところが、本願出願前公知の引用例の記載が容器内に永久磁石と薬液を収容し、疾患部位に磁気治療、電気治療及び薬液治療を同時に併用する磁気応用電気治療器の導子に関するものであることは当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない甲第十一号証(引用例)によれば、引用例の実施例として、磁気と適宜の磁場とを付与するに都合のよい形状、構造に作られた馬蹄形の永久磁石を、湯又は水の入る筒の上面に跨るように嵌め込み、筒の中央に薬液を入れることのできる縦管を取付け、筒と管の底面とに液が浸出する孔口を設けて適宜の詰物でふさぎ、管の上面に注入口を設けて栓をし、筒の上部に電気治療器より流れる電流を接続するターミナルを設けた構成の導子が示されている(引用例のものが馬蹄形磁石を使用するものであることは当事者間に争いがない。)ところ、成立に争いのない乙第三、第四号証の各一ないし三によれば、馬蹄形磁石においては、その両端面のほか、両腕画にも強弱に程度の差があつても磁力が生じ、両腕間にも磁気作用が働くものであることを認めることができるとともに、前出甲第十一号証によつても、引用例の馬蹄形磁石についてその両腕面に磁力が生じ両腕間に磁気作用が働くことを妨げるように構成されているものとは認められないから、引用例の導子においては永久磁石の磁気作用が筒内の管中に存在する薬液にも働くものであると認めるのが相当であり、甲第二十三号証の一ないし四は右認定の妨げとなるものではなく、他に右認定を左右するに足る証拠はない。してみると、本願発明と引用例のものとは、磁気作用に医学的効果を発揮させる目的(本願発明が医学的効果を目的の一つとすることは原告の自陳するところである。)において同一であり、内部に磁石を包含所持させて、それ自体を磁界処理器とした容器とする構成においても同一であり、さらに、収容した薬液が磁気作用を受けることにより、同様の医学的効果(ただし原告が具体的に主張するものであることは除く。)を奏するものというべきである。

そして、成立に争いのない甲第十五号証の一ないし三、第十七号証の一ないし四、第十八号証によれば、一般に磁力の磁気作用は植物の発芽、成長を助長し、小動物の腫瘍の発育、増加を阻止もしくは抑制するのに良い影響を与えるものであること、これから推すと、本願発明及び引用例のものにおける磁力の磁気作用も右と同様の効果を生じるであろうことを認めることができるが、本願発明における磁力の磁気作用が、それを超えて引用例の磁気作用にはみられないほど顕著な原告主張の効果をもたらすことを肯認するに足る証拠はない。

したがつて、本願発明はその出願前公知の引用例に記載されたものと差異がないから、これを理由に、その出願を拒絶すべきものとした右審決の判断は正当というべきであつて、右審決に原告主張の違法があるということはできない。

三 よつて、本件審決の違法を主張してその取消を求める原告の本訴請求を理由がないものとして棄却することとする。

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